裸のグラスウールでつくる断熱等級7 続き
前回の続きになりますが、裸のグラスウールで施工する意味合いは、前回記載内容で何となくお分かり頂けたかと思います。
それでは、今回は、断熱等級7には欠かせない付加断熱について書いていきます。
日本の住宅では、昨年(2025年)に断熱等級4の義務化があり、また、上位等級である5、6、7という基準が2022年にできました。そういう流れがあってか、ユーザーの皆様の関心も以前よりは高まった印象を受けます。
最近では、断熱等級6という性能は当たり前になりつつあるのでは無いでしょうか?その断熱等級6は近畿エリアの殆どでUA値が0.46になります。そして、断熱等級7が0.26で、その差0.2です。
ここからの話は、完全に私個人の感覚になります。等級6のUA値0.46に、先程と同じ差の0.2を足すと0.66になります。等級5のUA値が0.6ですから、0.66は等級5より少し悪いぐらいという感じです。
恐らく、ユーザー皆様からすると、等級6(UA値0.46)から比べた-0.2と+0.2の温熱環境の違いは同等に思われるのではないでしょうか?また、工事の作業内容の差についても同じぐらいの仕事量の違いが生じると想像されると思います。
しかし、実際は、-0.2と+0.2では、その差は結構異なります。この事は以前にもお伝えしたことがありますが、UA値0.46から+0.2とした0.66の場合では、現場においての作業量に殆ど違いはありません。さらに、それは断熱等級4(UA値0.87)であっても同様です。
では、何が異なるかというと、断熱材の厚みと窓の仕様が少し変わる程度です。したがって、私の中では、断熱等級4~6は、施工の難易度や温熱環境において、50歩100歩といった印象を受けております。
それでは、一方の-0.2になる等級7(UA値0.26)ですが、こちらの場合は、先程の断熱等級4~6とは違い温熱環境や施工に関しても変化がでます。
温熱環境については、室内の温度ムラはなくなり、家の中の何処にいても一定の温度です。また、床暖房を設置する必要はありません。
そして、仕様については、冒頭で申し上げた付加断熱が必須になり、窓もトリプルガラスの使用が欠かせません。
断熱工事については、壁の付加断熱だけではなく、屋根(天井)も確実に1層増えますし、床下の基礎断熱や床断熱にも強化が必要です。そのため原価は上がってしまいます。
逆に言うと、それだけ原価がかかるので変化が出る訳です。
そこで本題にはいりますが、断熱等級7が世間に認知されだして、興味を持つユーザーの方が増えた一方で、思ったよりもビルダーが取組んでいないと感じておられるはずです。
断熱等級6までは、比較的すんなりきましたが、等級7になると一気に取組むビルダーが減る理由としては、断熱材の選定、施工が大きく絡んでいます。
現在、日本国内で使用される断熱材は、袋入りのグラスウールと吹付のウレタンの2つが主流になります。
この2つが主流の理由は、“施工が楽”と勘違いされている事に尽きます。袋入りのグラスウールは前回紹介した通りですし、吹付のウレタンにつきましては、通常の戸建てであれば専門の業者さんが1日か2日で作業を終わらすため、大工さんの手間が省けて、日数もかからないので、早く工事を終わらすという目的にはうってつけです。
ただし、その反面、その現場に係わる職人さんや業者さんには、断熱、気密の工事に対する意識は、それほど浸透せずに終わります。
すなわち、断熱、気密という部分の知識、技術の進歩がないままですから、正しい施工を求められた際には対応できません。
それでは、その対応できない事と、断熱等級7に必要な付加断熱の工事がどう関係するか。
それは、付加断熱に使用する断熱材として、先程、主流であるとお伝えした袋入りのグラスウールと吹付のウレタンを使用する事が基本的に無いからです。
理由として、袋入りのグラスウールについては、付加断熱の場合では、殆どの場合で気密ラインの外側で施工するので、そもそも気密と防湿の為とされている袋が要りません。どちらかというと施工上、袋は邪魔です。ですので、付加断熱でグラスウールを使用する際は、裸タイプが基本になります。
そして、吹付のウレタンについては、付加断熱の場合は屋外になりますから、施工上の問題含め様々なリスクが想定できるため、選択する理由が無いものだと思います。実際に吹付のウレタンを付加断熱で施工しているといった話は聞いた事がありません。
そうなると、付加断熱で使用される断熱材は、裸のグラスウールを使用するか、ボード形状のネオマフォームやスタイロフォーム、また、EPSなどになります。この中ですと、ボード形状のものが比較的施工がし易いとされており、ボード形状を選択されることが多いです。
ただ、比較的施工がし易いといっても、現場の納まりや欠損の無い施工は普段から慣れていないと、手こずる作業ではあります。
恐らく、普段から、そういう作業を行っていない、袋入りのグラスウールや吹付のウレタンを標準的に採用しているビルダーは施工に躊躇するでしょう。
あとは、断熱等級7になると屋根(天井)断熱が300mm以上になることが多いので、その断熱施工はどうするのか?といった問題も出てきますし、断熱等級7の施工にあたっては、何かと障害がでてきます。
このように考えていくと、断熱等級7になると積極的に取組むビルダーの数が減る理由が少しご理解いただけたのではないでしょうか。
前回、記載しました通り、正しい施工というものを真剣に考えていくと、裸のグラスウールでつくるという事は、決して遠回りではありませんし、現場に係わる職人さんや業者さんにとっては、意識が変わる大きな要素であると思います。
そして何より、現場における断熱の施工精度が確実に向上する事でしょう。
蘆塚
2026.10



