実は北向きがありかも?

前回まで2回続けて、あしづかホームの社屋の事を書かせて頂いて、今回はその社屋の1FにあるKAYANO COFFEEという喫茶店について触れてみます。

そもそも、何故、建築会社の社屋の中に喫茶店があるのか?といいますと色々な理由がございまして、以下まとめてみました。

1.近隣に喫茶店が無く、私自身困っておりました。恐らく、ご近所の住民の方でも同じように思っておられる方は居るのかな?という勝手な想い。

2.せっかく高性能な建物を建築するので、気軽にその温熱環境を体感して頂ける空間として利用して頂きやすい。

3.喫茶店で提供させて頂くコーヒーや食べ物の全てに拘りを持っております。例えばコーヒーは豆選び、豆の挽き方、淹れ方どれも手を抜くことなくお店のスタイルを確立し、その姿勢が家づくりにも通じているという事に少しでも気付いて頂けるように。

4.商売するうえでの更なるチャレンジという意味合いもあります。立地条件としては、住宅街の中で集客が望みにくい場所ですが、逆に考えますとこの場所である程度成功することになると、何処の場所でも通用するのでは?という考え。

このような感じでやってみました。

2.のように建物性能を体感して頂くという考えでは計画段階で喫茶店の位置や窓方位を現在の場所で大丈夫か?という意見がありました。

以前にもふれておりますが、この建物は北側道路に面しております。私の計画では当初から店舗部分は道路面(北面)に窓をとらないと店舗としての雰囲気を出しにくいと思っていたのと、仮に南側へ位置を変えて窓をとったとしてもロケーション的に隣接する民家の裏側が見えるだけで、あまり良くないかなと思っており南側案は全く想定していなかったのですが、温熱的な観点からセオリーに反するのでは?という事をある方から言われました。

確かにそれは、その方が仰る通りなのですが、店舗という点や建物全体のバランスを考えると結果的に今のレイアウトになってしまいます。

そして、そのまま“北向きレイアウト”で工事も進み完成し営業も行っておりますと、1年を通して喫茶店の居心地が凄く良いんです。

この建物ぐらいの断熱気密性能があると冬場は厨房での熱と少しの暖房で寒さ知らずですし、夏場は直射日光がないので、ゆるい冷房でひんやりとした気持ちいい涼しさが得られます。

もしも、これが南側に窓が有ると、夏場の場合には店舗なので窓の遮蔽物をする事が難しい為、オーバーヒートを防ぐのにエアコンの風量をあげないといけなくなります。

その結果、不快な気流を感じる事になっていたかもしれません。

そう考えると、飲食店の場合は、“実は北向きがあり”という事が出来ると思います。

あと、床が土間(モルタル)になっているので冬場は足元が冷えないかの多少は心配があったのですが、実際に使用していると基礎断熱のお陰で、その心配は一切必要ありませんでした。

基礎断熱(外側)の場合は、コンクリートやモルタルが蓄熱層になるようで、昔の家の土間で想像する寒さは全然ありません。

この辺りもこの建物で勉強になりました。

蘆塚

2020.04